担当者氏名 大野研而
作成年月日 05・12・16
報告フェース情報  
著者 太田藤市郎
著者肩書 陸軍軍医学校軍陣防疫学教室(主任 井上大佐)
著者2 出井勝重
著者2肩書 担任指導 陸軍軍医少佐
著者3 小林六造(嘱託)
表題 ウエルシ菌培養濾液内の作用要素について
副題 第一報 ウエルシA型菌毒素中に含有される「マウス」致死毒要素、ネーグラー氏反応発起要素および血漿凝固
  阻止要素の本体の比較研究
 出典著者  
 出典表題  
 出典雑誌・書籍名  
 出典頁  
 出典発行年  
 出典社名  
523
なし
種類 原著
分類1 428−3
分類2 313−28
分類3  
分類4  
受付 昭和18.5.18
印刷数  
米国メモの有無  
米国メモ  
頁数 13
索引用人名 植村尚清、Hirshfeld u.Klinglar,F.P.O.Nagler,Frankel u.Thiele,Brandt,G.Seiffert
索引用方法 マウス体内中和試験、ネーグラー氏反応、血漿凝固反応
索引用材料 ウエルシA型菌WA株、同PB64株、マウス
索引用対象名  
索引用疾病名  
索引用地名  
索引用その他  
参考文献(邦) 1
参考文献(欧) 5
 
10
抄録様式1  
背景 ウエルシ免疫血清の抗毒素単位測定法として従来から一般に使用されてきた方法は、ウエルシ菌毒素と、その
  免疫血清を混合したものをマウスの静脈内に注射し、死亡の有無を観察して判定する。この方法は、各種ガス
  壊疽菌免疫血清の単位測定にも応用され、現在最も優秀な方法と考えられる。ところが、1939年ネーグラーに
  より、ウエルシA型菌毒素と人血清を混合し、血温で放置すると10数時間後、人血清が蛋白濁化することが発見
  され、これをウエルシA型菌免疫血清で阻止できるので、ウエルシ免疫血清の単位測定法として、ネーグラー氏
  反応なるものが発表された。このほか、ウエルシ免疫血清にウエルシ菌毒素による溶血および壊疽を防止する
  能力があるのでこれらによるその血清の抗毒素価測定法なども、考案・発表されたがいずれも前記マウス体内
  中和試験には追従できなかった。これまでに私はウエルシA型菌毒素中血漿に凝固促進性をもつワッセルマン
  氏反応用抗元に作用してその凝固を阻止する能力があることを発見し、その阻止能力をウエルシA型菌免疫血
  清で試験管内中和試験を行って得た成績が、マウス体内中和試験による測定値と一致する結果を得たので、「
  ウエルシA型菌免疫血清単位の新測定法」を考案しえたものとして発表した。
目的 ウエルシA型菌免疫血清単位測定法のうち、これら3つの方法を比較検討するとともに、その本態につき究明しえ
  たことがあるので、その概要を報告する。
方法 マウス体内ウエルシ菌毒素・抗毒素中和試験による測定法(以下「マウス体内中和試験」)、ネーグラー氏反応に
  よる測定法(以下「ネーグラー氏反応」)、および血漿凝固反応出現の有無による方法(以下「血漿凝固反応」)の
  3者を比較するのに、2種類のウエルシA型菌(WA株、PB64株)の毒素で実験した。(1)ウエルシA型菌の毒
  素の調整:しかるべき方法で、PB64およびWA硫安毒素溶液を調整した。(2)マウス体内中和試験:陸軍検定
  法による。すなわち乾燥標準血清を滅菌生理食塩水で2単位/1ccとなるよう溶解希釈、その1ccにPB硫安毒素
  液(滅菌生理食塩水1ccにPB64硫安毒素10mgの割りに溶解)の逓減量を加え、全量が5ccとなるように滅菌
  生理食塩水を加え混合、血温に40分間放置したあとマウスの静脈内に0,5ccずつ注射、4日間その生死を観
  察し過半数を死亡させた使用毒素の量を、試験毒素量の10倍とする。この試験毒素量の10倍量に各種の濃度
  に希釈した可検血清(検査対象の血清)1ccを加え、さらに滅菌生理食塩水を加えて全量を5ccとしたあと血温に
  40分置いた物をマウスの静脈内に0,5ccずつ注射し4日間その生死を観察し3分の2の死を免れた可検血清の
  希釈倍数で、「抗毒素価陸軍単位」を算出した。(表1)。(3)ネーグラー氏反応:WAおよびPB64菌株を肝片肝
  臓ブイヨンに18時間培養しこれを濾過した濾液を、マウスに対する最小致死量を測定したあと、その濾液を滅菌
  生理食塩水で希釈し、1cc20m.L.D.を含むようにする。人血清は個人によりウエルシA型菌毒素と重畳又は
  混合した際に生ずる蛋白色濁の程度には強弱の差があるので、数名から採取した血清を混合し、56℃、30分
  加温・非働性にしたものを使用した。ネーグラー氏反応の原法は、この毒素溶液と人血清とを混釈させるのだが、
  私は両者を重畳させ、その境界に生じた白輪で判定する変法を考案し、実施した。すなわち試験管にまず非働化
  人血清0,1ccずつをいれ、別に可検血清の各種段階に希釈したもの0,2ccにウエルシ菌毒素液0,2ccを加え、
  充分混合し血温に40分間置いたものを、0,2cc前記人血清の上に静かに重畳させたあと、さらに血温に18−
  24時間放置後その境界に生じた白輪の有無で、成績を判定した。(表2)。(4)血漿凝固反応:PB64毒素液
  0,1ccを加え混合したあと血温に60分間放置、そのあとワッセルマン氏反応用抗元希釈液を全試験管に0,1
  ccずつ入れ、混和し室温に60分間放置後、塊酵素原液0,5cc、塩化カルシウム溶液1ccずつを加え充分に混
  合した後、室温に15分間置く。これに蓚酸血漿1ccずつを加え、血漿凝固出現の有無を60分間観察した(表3)。
  単位価の決定は、単位価既知血清を対照とし、比例的に可検血清の単位を算出することができる。
材料あるいは対象  
研究対象(実施)年月  
場所  
結果 (1)同一材料につきマウス体内中和試験、ネーグラー氏反応および血清凝固反応で得た測定価
  の比較:ウエルシ菌PB64株免疫血清とPB64株硫安毒素液で、マウス体内中和試験、ネーグ
  ラー氏反応および血漿凝固反応によりそれぞれ単位価を測定した。(表4,5,6)すなわち免疫
  血清はマウス体内中和試験で175単位であることが分かった。またネーグラー氏反応によっても
  175単位であった。つぎに血漿凝固反応の成績でも。既知血清を基準として比例的に算出すると
  175単位となる。これら3つの反応で単位価の測定を行ったが一致した成績が得られた。
  (2)ウエルシA型菌毒素中に含有されるマウス致死毒素要素と、血漿凝固反応阻止要素との比較
  :@両要素の能力の比較:PB64およびWA硫安毒素を生理食塩水1ccに対して10mgの割合に
  溶解した毒素液を原液とし、それをさらに滅菌生理食塩水で逐次希釈した溶液を0,5ccずつ、各
  希釈ごとに3匹のマウスに静脈注射し、4日間にわたってその生死を観察し、その毒素のマウスに
  対する最小致死量を測定した。別に前記PB64およびWA硫安毒素溶液の抗元凝固促進性を阻
  止しうる能力を比較した。(表7)。その結果に基づきマウスに対する致死能力と血漿凝固阻止能力
  とを比較すると、PB64硫安毒素は同一濃度のWA硫安毒素に比べ、マウスに対する致死能力は
  ほぼ22倍強いが血漿凝固阻止能力ははるかに微弱であることが分かった。よって両毒素液の、
  致死能力と凝固阻止能力とは平行しないことが分かった。A両毒素の加熱に対する抵抗性の比較
  :同一濃度に溶解したPB64およびWA硫安毒素溶液を100℃、80℃、60℃、50℃および40℃
  の各温度に保った湯煎中に約1時間入れた後、マウスに対する致死能力と血漿凝固阻止能力と
  を検査したところ、60℃以上1時間加熱した毒素液はいずれの能力も消失するので、両要素の
  加熱に対する抵抗力はおおむね等しいものと認められる。(表8)。Bトキソイド化したウエルシA
  型菌毒素中の両要素の能力の比較:PB64およびWA硫安毒素溶液のそれぞれにフォルマリン
  を0,5%となるように加えたあと、37℃に7-10日間保って、その0,5ccをマウス3匹に静脈注射
  し、4日間観察したが死亡しなかったのでトキソイド化は、完全とみなしうる。このようなPB64およ
  びWAトキソイドの、血漿凝固機転に及ぼす影響を調べた。(表9)。すなわち血漿凝固機転に対
  しては、かなり減弱させられるとはいっても、阻止能力は有している。以上よりウエルシA型菌毒
  素中に含まれるマウス致死毒要素と血漿凝固阻止要素の能力を総合比較すると、第@で、同一
  濃度に溶解したPB64およびWA硫安毒素液中に含まれる両要素の能力に20倍以上の差があり
  両者の能力が平行しないこと、第Bで、完全にトキソイド化し、マウスに対して全く無毒となった
  PB64およびWAトキソイドにおいても、なお血漿凝固阻止作用のあることなどにより、両要素は
  まったく別個の要素とみなすことができる。ただ第Aで、加熱操作に対する抵抗はほぼ等しく、
  60℃以上60分の処置により破壊されることが分かった。(3)ウエルシA型菌毒素中に含まれる
  ネーグラー氏反応発起要素と血漿凝固阻止要素との比較:@ネーグラー氏反応発起要素のトキ
  ソイド化処置に対する影響:前記の方法で作ったPB64およびWAトキソイドで、ネーグラー氏
  反応を行ったところ陰性であった。一方血漿凝固阻止能力はあり、両要素は別個のものである
  事がわかった。A両要素の能力の比較:PB64およびWA硫安毒素溶液で、それぞれネーグラー
  氏反応を陽性にさせる最小濃度を測定し比較するとWAはPB64の4倍強力である事が分かった。
  (表10)。これらのことから、これら両要素は別個の要素であると考えざるを得ない。(4)ウエルシ
  A型菌毒素中に含まれるマウス致死毒要素とネーグラー氏反応発起要素との比較:トキソイド化
  により、全くその作用を消失する点は似ているが、マウスに対する致死能力とネーグラー氏反応
  発起能力とが4倍の相違を示し、これらが同一要素であるとみなすことはできない。
考察  
結論 (1)可検血清、試験毒素を同一にした材料についてマウス体内中和試験、ネーグラー氏反応および血漿凝固反応により得た測定単位価は、一致した。(2)ウエルシA型菌毒素中に含まれるマウス致死毒要素と血漿凝固阻止要素とを比較すると、両要素は相異なるものと考えられる。(3)ネーグラー氏反応発起要素と血漿凝固阻止要素とを比較すると、両者は相異なる要素と推定せざるを得ない。(4)おなじくマウス致死毒要素と、ネーグラー氏反応発起要素とを比較すると、両
  要素が同一であるとみなすことはできない。(5)ここにおいてウエルシA型菌毒素中にはマウス致死毒要素、溶血、壊死発起要素のほかネーグラー氏反応発起要素および血漿凝固阻止要素を含みかつ上記の3要素は別個の要素であることを帰納的に証明しえた。(6)これら3要素の本体については引き続き研究中で、後日報告の予定である。
抄録様式2  
抄録  
注目すべき事項  
本文中  
図表  
その他  
脚注・注釈  
備考  
担当者の考察